特 集
1. (区分所有)管理費等の滞納に対する法的手段
管理費などを滞納する所有者がいると、所有者間で関係がぎくしゃくするだけではなく、マンションの管理が回っていきません。
払わない人が多いマンションとなると、大規模修繕になかなか踏み切れなかったりします。
これらの滞納者には、管理組合として、滞納管理費を請求することができます。まずは内容証明郵便などで督促を行い督促に応じない場合、あるいは所有者と連絡がつかない場合、裁判を起こすことができます。管理組合は法人格がある組合とない組合がありますが、どちらも組合として管理費等の請求の訴えを起こします。
2. 管理費滞納者に対する裁判後の手続き
裁判で話し合いがまとまりそうなときは、和解で支払い方法を決めることもありますが、話し合いが困難な場合は判決をもらいます。
管理費等を支払うよう命じる判決がでた後は、その判決で当該所有者に強制執行ができます。物件自体に担保がついていない場合は、競売請求が可能ですし、そうでなくても、所有者の給与の差押え、賃借人がいる場合は、賃料の差押えなども可能になります。
3. 管理組合から管理費滞納者に対する競売請求
長期に管理費を滞納している所有者に対して、何度督促しても払ってもらえない、裁判を起こしたけれど裁判には出席せず、裁判後も払ってくれない。判決はもらったが、当該物件には多額の抵当権がついていて、とても管理費を回収できる見込みはない。そのような困難ケースについては、どう対処したらよいでしょうか。
この点、建物の区分所有者等に関する法律では、共同の利益に反する行為をした者について、行為の差し止めを求めること、専有部分の使用禁止を求めること、所有者の交代すなわち競売を求めること、の3種類の是正措置を定めています。
このうち長期管理費滞納者については、最後の競売請求だけが認められています。
4. 管理組合はどのような場合に競売申立てが可能か?
まずは、共同の利益に反する行為に該当する必要があります。管理費などの滞納も、何年も続けば驚くほどの金額になり、マンション管理・運営に支障を及ぼすのも当然といえます。判例では、数年間にわたり、百万単位で滞納がある場合に認められているケースが多いと思われます。
また、競売以外の方法によっては解決することができないことが必要です。つまり、担保がほとんどついていないような物件については、少ない滞納額で通常の競売請求が可能です。
その他にも、賃料や給料を差し押さえられる事案、当該所有者が支払の意思を有していて、かつ実際に支払が期待できる事案については、競売請求は認められません。
なかなかハードルが高く、これまでは管理費を払わないことが共同の利益に反するかということが議論されはっきりしませんでしたが、多くの管理組合がこの問題を運営上の死活問題として抱えているという社会的背景もあり、最近の裁判例では競売請求が認められるケースが続いています。
5. 管理組合側の不動産競売請求のメリット
競売請求しても、優先する抵当権がついていて、滞納分は戻ってこないのではないか?そのような心配もあるかもしれません。しかし競売の最大のメリットは、所有者が交代することなのです。管理費を何年も滞納するようないい加減な所有者から、別の所有者に変わってもらって、今までの分もこれからの分も払ってもらうに超したことはありません。
前所有者の未払管理費は、新所有者にも受け継がれますので、競売手続の中では、通常は実際の不動産の価格から未払管理費分が引かれた金額で売却がなされます。新所有者は、競落後の管理費はもちろん、前所有者の滞納分も覚悟して競落したのですから、管理組合としては新所有者に対してそれまでの滞納分を請求することになります。
6. マンションの管理費が支払えなくなっている方々へ
無理をしてでも管理費だけは払い続けなければならない、という状況の方々は確かにいらっしゃいます。以前にも当社でご相談いただいたお客様は、マンションの理事長をお務めされていた関係で、立場上苦しいながらも管理費だけは滞納出来ないという思いで生活費を切りつめてでもお支払されていました。プライドを取るか、生活を取るかの選択に対して第三者である私どもは容易に口を挟むことはできません。ですが、売却するとご決断されたのであれば"管理費の滞納"をお考えになられてもよろしいではないでしょうか。
任意売却で処理をすると、契約・決済後に滞納している管理費を、物件の売却代金の中から精算出来ますので、管理組合にご迷惑をおかけすることはございません。