特 集

相続問題と不動産

相続問題は社会の中でより頻繁に起きる身近な問題になっていますし、今後も相続問題は社会問題の大きなテーマであり続けるでしょう。

1. 相続とは?

相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の残した財産などの様々な権利・義務を、相続人が引き継ぐことです。具体的には被相続人が所有していた現金、預金、土地建物、有価証券、自動車などのプラスの財産を引継ぐとともに、借金などのマイナスの財産も引継ぐこととなります。したがって、プラスの財産とマイナスの財産を綿密に調査する必要があります。

2. 相続放棄とは?

亡くなった方(被相続人)の一切の権利・義務を引継がない意思表示をいいます。被相続人の残したプラスの財産とマイナスの財産とを比較して、マイナスの財産(借金など)が大きい場合には相続放棄をするのが一般的です。

この相続放棄の意思表示は、被相続人の死亡地を管轄する家庭裁判所へ「相続放棄の申述」を行う必要があります。また、相続放棄の申述は相続開始(被相続人の死亡)があったことを知った時から3カ月以内に行う必要があります。

3. 単純承認・限定承認とは?

単純承認とは被相続人の相続開始時に有したプラスの財産とマイナスの財産の全部を相続するというものです。マイナスの財産(借金など)は被相続人が家族に打ち明けたくない等の理由で、相続人の方が把握していないケースがよくあります。単純承認をするとマイナスの財産も相続するわけですから、単純承認をする場合には、借金等は綿密に調査する必要があると言えます。 また前述の相続放棄を行うことができる期間内(被相続人の死亡の事実を知った時から3カ月以内)に相続放棄の申述を家庭裁判所へ行わなかった場合は、単純承認したものとみなされますので注意が必要です。

限定承認とは被相続人のプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続するというものです。これは被相続人のプラスの財産はあるもののマイナスの財産がどれだけあるのかが判然としない場合等に利用されます。後々になって被相続人の借金があったことが判明した場合には、限定承認を行っておけば、相続人はプラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐこととなりますので安心です。また限定承認は相続人が複数いる場合には相続人全員で行う必要があります。

4. 相続と不動産の共有(持分)による問題!

60歳以上の高齢者の住環境についてみると、居住年数が31年以上のもの(「生まれた時から」を含む)が59.0%と6割近くを占めています。住み慣れた家にはずっと住み続けたいと考える高年者は多いようで、身体が虚弱化したときに望む居住環境は「現在の住宅にそのまま住み続けたい」が37.9%、「現在の住宅を改造し住みやすくする」が24.9%となっており、現在の住宅に住むことを希望している者は、62.8%と半数以上を占めています。

高齢者の多くは現在の住居に住み続けることを希望していることから、1次相続では不動産を分割しない方向で遺産分割を進める必要も出てきます。日本の相続財産の半数以上が不動産であることから、法定相続分とおりに分割することは難しい事情があります。また不動産は大部分の相続の場面で、大きな価値を占めるので、1次相続において不満の残る相続人が出た場合に、代償分割や遺産分割協議において親の世話を条件として特定の相続人に不動産を集中して分割するなどの方法で対応する必要があります。

マイホームを所有している場合に、残された配偶者が自宅にそのまま住み続けたいと思った場合に、売却して分配するわけにはいきません。ところが相続人が相続分を主張してきたときに、不動産が相続財産の大部分を占めていると分割がしにくいのです。不動産以外に財産がない場合は、現金がないので代償分割もできません。

もっとも分割しにくいからといって、不動産の共有は避けるべきです。全体に抵当権を設定したり売却したりするには、共有者全員の合意が必要になります。自分の持分だけを売却することは可能ですが、他人との共有不動産の持分を購入する者はまずいないため、売却しにくい不動産になります。共有持分を第三者に売却してしまうと、ほかの共有者に法外な賃料を請求したり高く売りつけたり、他の共有者にたかることによって安く持分を購入したりする輩が出現する危険もあります。共有持分は次の相続で話が複雑になり、人間関係は希薄化するのに対して共有者の数は増えることになります。

5. 相続申告の際の土地の評価額と、鑑定評価が異なる問題?!

相続税の申告の際の評価額は、路線価方式もしくは路線価方式を適用できない地域では評価倍率方式を適用して算定しています。これは課税の公平性に基づいて全国一律に土地や建物を評価する方法です。

一方、鑑定評価による評価額は土地が所在する地域や土地の個性に基づいて個々にその市場価値を求めるものです。したがって、土地の実勢価格を求めるためには鑑定評価によることとなります。詳しくは専門の不動産鑑定士・税理士にご相談ください。

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